2026.10.18
※この記事は2026年10月18日時点の情報をもとに作成されました。
2026年1月1日から、下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わりました。Web制作の外注で特に影響が大きいのは、資本金だけでなく従業員数でも対象かどうかが決まるようになったことと、価格の協議に応じずに一方的に代金を決めることが禁止されたことです。
Webサイトのデザインやプログラムの作成を他社に頼む取引は、法律上「情報成果物作成委託」にあたり、以前から下請法の対象でした。名前が変わっただけと思われがちですが、対象になる会社の範囲が広がったため、これまで対象外だった取引が対象になっていることがあります。
この記事では、制作会社様の下請けを専門とするRunLandの立場から、Web制作の発注・受注で押さえておきたい点を整理します。法律の解釈が必要な個別の判断は、必ず公正取引委員会・中小企業庁の資料や専門家にご確認ください。
取適法は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)を改正した法律で、2026年1月1日に施行されました。正式な名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。
| 項目 | 改正前(下請法) | 改正後(取適法) |
|---|---|---|
| 発注する側の呼び方 | 親事業者 | 委託事業者 |
| 受注する側の呼び方 | 下請事業者 | 中小受託事業者 |
| 代金の呼び方 | 下請代金 | 製造委託等代金 |
| 対象を決める基準 | 資本金のみ | 資本金 または 従業員数 |
用語が変わったため、契約書や社内の書式に「下請事業者」「親事業者」と書いている場合は、見直しの機会になります。
Webサイトのデザイン・コーディング・プログラムの作成を、事業として他社に委託する取引は「情報成果物作成委託」にあたります。対象になるかは、発注側と受注側の資本金または従業員数の組み合わせで決まります。
公正取引委員会の資料にもとづく目安(詳細な組み合わせは公式資料を確認してください)
| 委託の内容 | 資本金の基準 | 従業員数の基準 |
|---|---|---|
| プログラムの作成(システム開発・WordPressの機能開発など) | 3億円 | 300人 |
| プログラム以外の情報成果物(デザイン・コンテンツなど) | 5千万円 | 100人 |
資本金の基準と従業員数の基準はどちらか一方を満たせば対象になります。資本金が小さくても従業員が多い会社が発注する場合など、改正前は対象外だった取引が対象になることがあります。
なお、受注側が従業員を使わない個人などの場合は、フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の対象にもなる点に注意が必要です。
取適法の対象になる取引では、発注する側(委託事業者)に次の4つの義務があります。
Web制作では「とりあえず進めて、金額は後で」という発注が起きがちです。代金が決まらない場合でも、算定の方法を示して発注することが求められます。
当社(RunLand)は制作会社様の下請けを専門にしているため、受注側として発注書やメールを受け取る機会が多くあります。作業内容と金額、納期、支払期日が1通のメールにまとまっていると、こちらも作業範囲をすぐに確認でき、着手までの時間が短くなります。明示の義務は、発注側の負担を増やすだけのものではなく、双方の確認の手間を減らす効果もあると感じています。
取適法では、受領拒否・支払遅延・減額・返品・買いたたき・購入や利用の強制・報復措置・不当な経済上の利益の提供要請・不当な給付内容の変更ややり直しなどが禁止されています。今回の改正で新たに加わったものもあります。
| 禁止行為 | Web制作で起きやすい例 |
|---|---|
| 協議に応じない一方的な代金決定(新設) | 原価上昇を理由に値上げを相談されても話し合わず、従来の単価を押し付ける |
| 手形などでの支払い(原則禁止) | 制作費を手形や、期日までに現金化しにくい方法で支払う |
| 減額 | 納品後に「予算が減った」として約束の代金から差し引く |
| 不当なやり直し | 仕様にない修正を無償で何度も求める |
| 受領拒否 | クライアント都合の延期を理由に、完成したデータの受け取りを拒む |
また、振込手数料を受注側に負担させることも認められなくなったと案内されています。支払いの運用は経理部門とも確認しておきましょう。
Web制作では、クライアントからの入金を待ってから外注先に支払う運用をしている会社もあります。しかし、支払期日は外注先から納品物を受け取った日を基準に決まるため、クライアントの入金が遅れたことは、支払いを遅らせる理由になりません。資金の流れも含めて、発注前に支払条件を決めておくことが大切です。
制作会社が下請けに出すときは、次の点を確認しておくと安心です。
発注内容の決め方は要件定義書のテンプレート、契約で決めることはWeb制作の契約で決めることにまとめています。
取適法は受注側を守るための法律ですが、受注側も記録を残しておかないと守られにくくなります。
当社が下請けとしてお仕事を受けるときは、次の順で記録を残しています。
修正範囲の線引きは検収チェックリストを使うと合意しやすくなります。
取適法は、施行日より前から続いている取引の書式や運用にも影響します。Web制作の現場では、毎月の更新作業や保守を、同じ外注先に口約束のまま続けていることも少なくありません。
見直しは、次の順で進めると漏れが少なくなります。
相手先の従業員数は、普段の取引では把握していないことが多い情報です。分からない場合は、取引先に確認するか、対象になる前提で発注内容を明示しておくのが安全です。どの取引が対象になるかの最終的な判断は、公正取引委員会・中小企業庁の最新の公式情報を確認してください。
Q. 下請法と取適法は別の法律ですか?
A. 下請法を改正したものが取適法です。2026年1月1日から施行され、名称・用語が変わったほか、対象の拡大や禁止行為の追加が行われました。
Q. 個人のフリーランスに外注する場合も取適法の対象ですか?
A. 取引の内容や規模によっては対象になります。あわせてフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)の対象にもなるため、両方の義務を確認してください。
Q. 発注書は紙でなければいけませんか?
A. 書面のほか、メールやチャットなどの電磁的方法でも明示できます。口頭だけの発注は認められません。具体的な要件は公正取引委員会の資料で確認してください。
Q. 自社が対象かどうか分からない場合は?
A. 公正取引委員会・中小企業庁が公開しているテキストや相談窓口で確認できます。個別の判断が必要な場合は専門家への相談をおすすめします。
取適法への改正で、Web制作の外注でも「対象になるかどうか」の確認と、発注内容を記録に残すことの大切さが増しました。発注側・受注側のどちらにとっても、条件を最初に書面やメールで共有しておくことが一番の予防策です。
RunLandは制作会社様の下請けとして、発注内容・修正範囲・支払条件を着手前に確認したうえでお仕事をお受けしています。外注の進め方に不安がある場合も、ご相談ページからお気軽にお問い合わせください。サービスの詳細は外注・下請けサービスをご覧ください。
弊社では上記ブログ内容にある修正・カスタマイズのご依頼も承っております。
ご自身で行ってみて上手くいかない場合などこちらよりお気軽にご相談ください。