2026.11.01
※この記事は2026年11月01日時点の情報をもとに作成されました。
Webアクセシビリティ対応を外注するときは、「どの基準で」「どのページまで」「どう確認するか」の3点を最初に決めます。日本ではJIS X 8341-3:2016が基準として使われており、目標とする適合レベル(多くはAA)と、対象ページの範囲、試験をするかどうかを合意しておくことが、見積もりと品質の前提になります。
2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による合理的配慮の提供が義務になったことをきっかけに、ウェブサイトのアクセシビリティを見直す相談が増えています。
この記事では、制作会社がアクセシビリティ対応を外注する、またはクライアントから依頼を受けるときに決めておく範囲を、チェックリストの形で整理します。法律の解釈については、必ず最新の公式情報をご確認ください。
内閣府によると、2024年4月1日施行の改正障害者差別解消法により、事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が、努力義務から義務になりました。
一方、不特定多数の障害者を対象に事前に行う改善措置である「環境の整備」は、引き続き努力義務とされています。デジタル庁のデザインシステムの解説では、ウェブサイトにおいてはアクセシビリティの確保がこの「環境の整備」に該当すると説明されています。
つまり、改正法によって「すべてのサイトがJIS規格に適合しなければならない」と定められたわけではありません。ただし、個別の申し出に対応する合理的配慮は義務であり、その前提としてサイトの使いやすさを整えておくことが求められている、と理解しておくのが現実的です。具体的な判断は、内閣府の基本方針や所管省庁の対応指針を確認してください。
公的機関のサイトでは、JIS X 8341-3:2016の附属書JBに示された試験方法に沿って、ページを抽出して試験し、結果を公開している例があります。総務省やデジタル庁の公開資料が参考になります。
| 適合レベル | 位置づけ | 依頼での扱い |
|---|---|---|
| A | 最低限満たすべき基準 | これを満たさないと利用できない人が出る |
| AA | 多くの公的機関が目標とする水準 | 依頼の目標として最も一般的 |
| AAA | 最も高い水準 | サイト全体での達成は難しく、一部の項目で目指すことが多い |
見積もりの前に、次の項目を合意しておきます。ここが曖昧だと、費用も品質も比較できません。
「対象外の扱い」は特に重要です。PDFや外部の予約システムなどは、サイト側の改修だけでは対応できないことがあります。
これらの項目を依頼文にまとめた例です。【】の部分を書き換えてお使いください。
件名:【サイト名】アクセシビリティ対応のご相談
■ 目標:JIS X 8341-3:2016 適合レベル【AA】
■ 対象:【例:トップ・サービス一覧・お問い合わせ・お知らせ一覧のテンプレート】
■ 種別:【新規制作/既存サイトの改修】
■ 確認方法:【例:自動チェックツールと目視・キーボード操作での確認。試験結果の公開は今回は行わない】
■ 対象外:【例:過去のPDF資料、外部の予約システム】
■ 公開後:更新担当者向けの書き方ガイドの作成を希望【する/しない】
「確認方法」まで書いておくと、見積もりを比べるときの前提が揃います。試験を行って結果を公開する場合と、制作時の自己チェックにとどめる場合とでは、作業量が大きく異なるためです。
外注の範囲を決めるときも、この工程の分け方が役に立ちます。デザインは別の会社、コーディングは下請け、原稿はクライアントというように担当が分かれる場合は、どの工程の確認を誰が行うかを最初に決めておかないと、「誰も確認していなかった」項目が残ります。アクセシビリティはコーディングだけの問題ではなく、デザインと原稿の段階で決まる部分が大きいです。デザイン段階のチェックは、コーディングに入る前のデザインレビューでまとめて行うと手戻りが少なくなります。
| 工程 | 主な確認項目 |
|---|---|
| 設計 | 見出しの階層・ページタイトル・ナビゲーションの一貫性 |
| デザイン | 文字と背景のコントラスト・色だけに頼らない表現・文字サイズ |
| コーディング | 代替テキスト・キーボード操作・フォーカスの見え方・フォームのラベル |
| 原稿 | 分かりやすい見出し・リンク文言(「こちら」だけにしない) |
| 公開後 | 新しく追加するページやお知らせでの書き方の維持 |
既存サイトの場合は、いきなり直すのではなく、現状の把握から始めます。
ツールによる自動チェックだけでは見つからない問題もあるため、キーボード操作や読み上げでの確認も組み合わせるのが一般的です。
たとえば、画像に代替テキストが入っているかどうかはツールで分かりますが、その内容が画像の意味を正しく伝えているかは人が読まないと判断できません。キーボードのTabキーだけでページを操作してみる、スマホの読み上げ機能で主要ページを聞いてみる、といった確認は、専門の機材がなくても始められます。改修の範囲を決めるときは、こうした確認の結果を一覧にして、クライアントと共有しておくと合意がしやすくなります。
既存サイトの調査で見つかりやすい問題と、直し方の方向性を一覧にします。どれも特別な技術ではなく、制作時に意識していれば防げるものです。
フォームの項目設計はお問い合わせフォームの要件チェックリストもあわせてご覧ください。
| よくある問題 | 困る人の例 | 直し方の方向性 |
|---|---|---|
| 画像に代替テキストがない | 画面の読み上げを使う人 | 内容を伝える画像には説明を入れ、飾りの画像は読み上げ対象から外す |
| 文字と背景の色が近い | 見えにくさのある人、屋外でスマホを見る人 | コントラストを確保した色に変える |
| マウスでしか操作できないメニュー | キーボードで操作する人 | キーボードで開閉でき、フォーカスが見えるようにする |
| 入力欄にラベルがない | 読み上げを使う人 | 項目名を入力欄と関連付ける |
| エラーが色だけで示される | 色の見分けにくさがある人 | 文字でもエラーの内容を伝える |
| リンクが「こちら」だけ | 読み上げでリンクを一覧する人 | リンク先が分かる文言にする |
当社(RunLand)は制作会社様の下請けとしてコーディングをお受けする際、ご依頼の段階で目標とする適合レベルと対象範囲を確認しています。指定がない場合も、見出しの階層、画像の代替テキスト、フォームのラベル、キーボードで操作できることなど、基本的な項目は実装の標準としています。
コーディング時の指示の出し方はコーディング指示書・仕様書の作り方、公開前の確認はホームページ公開前チェックリストにまとめています。
Q. 改正障害者差別解消法で、ウェブサイトのJIS適合は義務になったのですか?
A. 内閣府の公表では、2024年4月から事業者に義務化されたのは合理的配慮の提供で、ウェブアクセシビリティの確保を含む「環境の整備」は努力義務とされています。個別の判断は最新の公式情報をご確認ください。
Q. まず何から始めればよいですか?
A. 主要なページで現状を調べ、利用できない人が出る問題(レベルAの不足)から優先して直すのが現実的です。
Q. WordPressのテーマを変えればアクセシビリティ対応は済みますか?
A. テーマで改善できる部分は多いですが、画像の代替テキストや見出しの付け方、リンクの文言など、原稿側で決まる部分も残ります。テーマの対応と運用ルールの両方が必要です。
Q. すべてのページを一度に対応する必要がありますか?
A. 必須ではありません。共通テンプレートから直し、対象範囲を段階的に広げる進め方もあります。範囲は依頼時に合意しておきます。
アクセシビリティ対応は、「基準」「範囲」「確認方法」を最初に決めることで、費用と品質を比べられるようになります。
法律の位置づけは、内閣府・デジタル庁などの最新の公式情報で確認したうえで、目標と範囲を決めてください。アクセシビリティを考慮したコーディングのご相談はご相談ページ、サービスの全体像は外注・下請けサービスをご覧ください。
弊社では上記ブログ内容にある修正・カスタマイズのご依頼も承っております。
ご自身で行ってみて上手くいかない場合などこちらよりお気軽にご相談ください。